それではただのお題目。本当に企業を強くする企業理念の作り方

それではただのお題目。本当に企業を強くする企業理念の作り方

経営戦略の立案に合わせて、あるいは会社の周年行事を機に企業理念を一新しよう、または明示しようと、考えている経営者の方やその任務を受けた方もいるでしょう。あるいは従業員の仕事の方向性を統一し、社内を一体化させるためにそれを考えている場合もあるかもしれません。

企業理念は、確かに適切なプロセスを踏んで開発し、かつ従業員を巻き込める仕組みがセットであれば、その企業を強くしてくれる大きな要素になります。しかしそのポイントを押さえていないと、単に経営者や開発担当者の自己満足としてお題目に終わってしまう危険性もあります。

ここでは、企業理念をどのように開発し、どのような仕組みをセットで考えれば、会社を強くすることにつながるのかという手法についてご紹介します。

従業員の指針を作ること

企業理念で最も大切なことは、それが従業員の日々の仕事の指針や判断基準になるような内容にすることです。

そうなるためには以下の要件があります。

共感性がなくてはならない

まずその企業理念が発表された時に、従業員が「その通りだ」と共感する内容であることが最も重要です。

それはボトムアップで開発することでも得られますが、その企業の経営者が非常にカリスマ性があって、大多数の従業員がその経営者の顔を仰ぎ見ながら仕事をしているようであれば、そのトップダウンでも十分に可能です。

したがって、一部の「経営企画室」のスタッフが、自分たちだけで、ある意味密室で作ったものは、その点で企業理念の作り方としては失格です。

企業の親和性と、革新性の両方が必要

どんなに立派で高邁な企業理念でも「内容はもっともだがうちの会社らしくない」というようものも、「お仕着せ」になり従業員のメンタリティとの親和性がないので、従業員の行動の基準として定着はしません。

とはいえ、あまり現実の実態に即しすぎていても、作る必要がありません。

大切なのは、自社の企業風土に合っていながら、同時にその企業が進んで行くべき、あるいは変わっていくべき方向を示すことです。

従業員が普段やりがいを感じる

従業員に共感される企業理念を開発するポイントは、明示化されていなくても従業員が日々のの仕事の中でやりがいや価値を感じている共通の「思い」をすくい上げて、それを理念の核に据えることです。そのためには、最初に各階層、各部署の従業員のマインドをインタビューすることもよい手法です。

さらに企業のブランディング戦略として考える

企業理念は本来、従業員だけのために作るものではありません。消費者(顧客)、取引先なども含めたステークホルダーにも明示し「宣言」するものです。

特に消費者にとってもその理念に共感性があれば、企業に対する好感度につながり、それが自社の「ブランディング」にもなります。ブランド化された企業は、価格競争をしなくても購入を選択されるので、その企業の持続的な収益に大きく貢献してくれます。

企業理念を作る際の事前準備

ではそのような要件に合致した企業理念を開発するにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。その中でも重要なのは以下のような事前準備です。

企業理念は3要素で整理する

経営者や従業員の意見で共通している価値観、あるいはトップや理念開発担当者が共感できるものを以下の3要素で整理します。

ミッション:自社の社会における「使命」は何か
ビジョン:自社が目指すことは何か。自社の「志」は何か
バリュー:自社が最も重視する価値観は何か

企業戦略との整合性を確認する

その上で、その内容が「企業戦略」の方向性、ドメインと整合しているかを見ていきます。
それは現事業とだけではなく、戦略として新たに進もうとしている事業やビジネスモデルなどの事業ポートフォリオすべてを含めて考えます。

会社全体を巻き込むことが重要

まずトップ経営者の企業理念として入れ込みたい内容や文言、方向性についてしっかり確認しましょう。本心からトップがコミットしていない企業理念は絶対に浸透しません。

さらに、従業員の思いをすくい上げるプロセスを入れることで、発表後の浸透や定着はある程度担保できますが、できあがった時に「この企業理念は自分たちのものだ」という意識を徹底しようという場合は、以下のようにプロセス自体に従業員を巻き込むことも考えましょう。

公募と投票

1つは企業理念の公募をすることです。「企業理念」という形ではとっつきにくく感じてしまう可能性もあるので、「会社に対する一行手紙」のような親しみやすい企画にしましょう。

またその公募結果に対して、あるいは上のプロセスで開発した理念の草稿に対して、従業員の人気投票を行う方法もあります。この方法はかなり従業員の参画意識を高められます。

各部門でのオフサイトミーティング

インタビューだけではなく、従業員がリラックスして自由に話せる雰囲気で行う「オフサイトミーティング」などでも思いを聞きましょう。本音が出てくることが重要なので、必要であればアルコールなども用意しましょう。

さらに、理念の草稿に対して各部門や各階層でオフサイトミーティングを行い、自由な感想を述べてもらうこともよいでしょう。

その内容は必ず把握し、理念の修正に反映させてもさせなくても、出てきた内容とそれに対する判断を社内に明示することが重要です。

「いうだけ言わせてそれっきり」ということはNGです。

最後は文章化する

最後は文章化です。

ここで選ぶ文言1つ1つが共感性を呼び、社内の一体化と従業員の行動の指針化につながるかどうかのカギですから、練りに練りましょう。

わかりやすい言葉で

どうしても高学歴の企画担当者が開発すると難しい文言を選びがちですが、それでは浸透しません。
学歴差別ではありませんが、高卒で製造現場で働いている新入社員にもわかる言葉を選びましょう。

従業員が日常の仕事の中で使っている言葉を入れ込んでも共感性が高まります。
企業理念をしっかりと従業員全員に理解してもらうことが非常に大事になります。

格好よく

とは言え「普通」では、それを読んだ従業員のモチベーションが上がりません。格好良くて、リズムがある文体にもこだわりましょう。

格好良い企業理念を掲げることで、より一層従業員の気持ちを高め仕事に良い影響を与えるでしょう。

英語はできるだけ使わない

これはその企業の風土や従業員の層にもよりますが、一般的な日系企業であれば英語はできるだけ使わないほうがよいでしょう。

もちろん、仕事に英語がどんどん出てくるような企業であれば別です。自分たちの企業のイメージにあった企業理念にすることが大事かもしれません。

企業理念を作ることで行動の変化を起こす

ここまでで企業理念は一応「形」はできました。ここに「魂」を入れるには、従業員がその理念を常に頭に置き、自分の仕事や行動の指針や判断基準にするように仕向けることです。そのためには最低2つのことは行いましょう。

社員が常に携帯し、いつでも見られるようにする

1つは社員が常に携帯し、思いついた時にすぐ見る癖がつくような形状で配布することです。

よく手帳化して配布する企業もありますが、これは形だけに終わる危険性があります。たとえば、首からネームプレートやIDカード下げているような企業であれば、そこに一緒に入れられるようにカード化することなどがよいでしょう。

唱和ではない方法での浸透。理念ミーティング

またこれもよくあるのが朝礼で全従業員が企業理念を唱和することです。しかし特に若者の間ではこれを「ブラック企業の特徴」と捉えられているように、教条主義的で、ほぼ確実に浸透しないばかりか反発を招く恐れもあります。

そうならないようにするには、事前準備でも行ったオフサイトミーティングを、発表後も行うことです。そこでのテーマは「自分が理念に沿って行った行動の発表」を中心にし、そのミーティングは定期的に行います。

作ることが目的ではなく、従業員に指針を示す目的で作ろう

以上が「企業を強くする」企業理念の作り方です。中でも触れましたが、してしまいがちな間違いは「経営者と担当者だけで作る」「作った後の浸透と定着のプロセスを重視しない」ことです。
その点にしっかりと注意しながら、以上でご紹介したステップを参考に、従業員にも消費者にも共感される企業理念を開発してください。

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