セブン銀行はなぜ黒字なのか。企業がウィン=ウィンになる秘策
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参入企業が多い市場は産業が成熟しますが同時に、企業間の過当競争が始まり
企業の利益率が下がります。
銀行業界も、預金者が不足し、倒産もしくは倒産の一路を辿る所がある中、
ATMに特化したセブン銀行が黒字である理由はどこにあるのでしょうか。
バリューチェーンを代替する
企業が原材料を調達してから商品にサービスを付加して届けるまでの活動連鎖をバリューチェーン(価値連鎖)と言います。
ハーバードビジネススクールの経済学者、マイケル・ポーターが提唱した言葉で、
バリューチェーンは、原材料を製品化し顧客に届けるまでの主活動、製品にサービスを付け足す支援活動の二種類に分かれ、この二つのバランスが取れる事で商品が売れると言います。
原材料の調達製品化を一元化(主活動)し、製品にストーリーを付け加える事(支持活動)に成功したのが、スターバックスやアップルです。
ですが、どの企業もスターバックスの様に製品を管理し、商品にストーリー性を持たせる事が出来るわけではありません。
企業の過当競争を避けつつ、ライバル企業に差を付けるためには、ライバル企業のバリューチェーンの一部を代替する事も視野に入れなければいけないのです。
協調戦略とは
協調戦略とは、競合企業と出来るだけ競争しないで共存を図り、協調する事を言います。
軽自動車業界では、20年近く前から東南アジアで、製造ラインの相互OEMをしています。
メーカー同士が、コストダウンの為、お互いの会社の「製造、物流」というバリューチェーンを壊すことなく、協調戦略を取った一例です。
船井電機は、日本では知名度はありませんが、北米のSANYO、コダック、フィリップス社のOEMを手掛けた事で、業界4位に上り詰めました。
その経験を生かし、ホテル、医療機関など法人向けのカスタマイズ電化製品へ市場を広げているのです。
このように、協調戦略は思わぬ所に市場を開いてくれます。
何故セブン銀行は黒字なのか
従来の協調戦略は、企業のバリューチェーンを変化させない事が目的でした。
ですが、ここ10年の間に見られるようになった協調戦略は、企業の内部がやるのが当たり前だった業務を代替する事で、1つの会社を起こした例です。
その代表例がセブン銀行です。
セブン銀行は、銀行免許を所得していますが事業内容はATMのみで、収入源は他行のキャッシュカードの現金を引き出す時の手数料です。
黒字化した理由は他行との提供にあります。
金融機関が、自前のATMを駅前やデパートに設置するのはコストがかかります。
しかもここ十年来ATMを破壊して預金を奪う事件も相次いで起こっています。
これらのリスクやコストを回避する目的で、金融機関はセブンと提供し、コンビニ内に
自分の銀行と提供したATMを置いて貰うようにしたのです。
これにより、他行の顧客も呼び寄せるメリットもある上、ATMが破壊されるというリスクも防げます。
新生銀行の様に、自行のATMの中にセブン銀行のATMを設置する所も出てきています。
クレジットカードのプロセシング事業も代替化
セブン銀行の様に、銀行の「ATM機能」というバリューチェーンを代替化し、1つの会社として独立させて成功する例は他にもあります。
クレディセゾンの子会社キュービタスは、カードの入会手続き、監査、カード決済などの「プロセシング業務」を受け持つ会社です。
クレディセゾン、みずほ銀行、UCが、銀行やクレジットカードのバリューチェーンの1つ、
「プロセシング」を独立させ会社にしたものです。
一般にカード会社の業務は、会員獲得や利用販促を担う「会員」、加盟店にアプローチする「加盟店」そして、プロセシングがあります。
プロセシングこそ、カード会社の命とも言える情報管理部門なので、この部門を独立させ、
表面に見えるカード会社の看板という、見える部分に違いを出し、見えない部分は効率化しつつ、仕事を確実にするというやり方は、企業バリューチェーン代替の1つの方法です。
既存の市場を広げる協調戦略
競争戦略では、他社と差をつけ、顧客の心をいかにして掴むかという事に重点を置きますが、
大手に市場の半分以上を占められる業界になると、中小企業は、お互いに協力しなければ、
生き残っていけません。
印刷業や、配送業は、大手に市場の半分以上を独占されている業種ですが、残りの市場を、
中小企業が奪い合う事無く、仕事の割り振りをし、生き残る戦略をたてた会社を紹介します。
印刷機も実店舗ももない印刷会社
全国の中小印刷会社を組織化し、ネットで顧客から注文を承る、ネット通販会社ラクスルがあります。
印刷業界は市場の5割を、業界最大手の大日本印刷と凸版印刷が占め、残りの5割の市場を、
中小印刷会社が奪い合っているのです。
印刷会社の多くは、マーケティング能力を持たない為、いつどこに需要があるかも判らず、
閑散期は、一台数億円するオフセット輪転機が稼働しないままとなり、赤字となる会社も出ています。
そこでラクスルは、各中小印刷会社の「営業、注文業務」というバリューチェーンを代替し、
印刷機を持たない印刷会社として独立させ、印刷の注文を24時間体制で受付。
閑散期の印刷会社に発注し、コスト削減に挑んでいます。
印刷会社も、同じサイズの印刷物を複数組み合わせて一気に印刷する事で、印刷の効率化と、
輪転機の稼働率を上げる事が出来るので一石二鳥なのです。
同業他社とも共存を図る
ラクスルは、印刷業で成功した後、中小運送業者を組織化し、荷主と運送業者を結ぶ運送会社「ハコベル」を立ち上げました。
コンセプトとしては「ハコベル」の運送業版で、荷主が借りる車両を選べるだけでなく、
大手配送業者との折り合いもつけられる所が最大の売りです。
大きい荷物は大手配送業者に、小さい荷物はハコベルに頼んでいる業者も多く、
和菓子屋の「榮太郎本舖」はハコベルを巧く利用し、配送コストの削減をしつつ、配送業者同士の協調戦略に挑んでいます。
開拓の余地がないと誰もが思う所にチャンスあり
同業他社が同じ市場に多数乗り入れる様は、満員のバスに人を詰め込むのに似ています。
満員のバスに乗った人々が目的地に着く頃には、疲れて何もする気がおこらなくなるのと同じで、同業他社が同じ市場に乗り入れると市場そのものが疲弊し、利益率が下がります。
こうした所は、競合相手の殆どが「今までのやり方ではもうだめだ」と思っているので、
バリューチェーンを代替もしくは加えることで、市場を拡大できるチャンスなのです。
開拓の余地がないとライバルが思う市場こそチャンス。
セブン銀行が成功を掴んだ理由はここにあります。
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