メルセデス・ベンツがカフェを展開する理由
- カテゴリ名:役立ちコラム
- 投稿日:
企業の中には「本社よりもグループ会社の方が有名」というものや、「本業よりも副業の方が知名度が高い」というものがあります。
これは企業が、商品を売る為なり、自社が提供するサービスを消費者に有効に使ってもらうために、様々な工夫を凝らした結果なのです。
文化開発とは
市場に商品やサービスを投入する際、その商品を使えば生活習慣が便利になり豊かになる事を企業が責任を持って消費者に説明する事を文化開発と言います。
企業に属していない人でも、消費者に対し文化開発を行う事は出来ます。
商品や既にあるサービスが具体的にどの様に人々の役に立つのか消費者に説明するだけで良いのです。
日本の企業や、企業に属する個人が文化開発で成功した例には、どの様なものがあるのでしょうか。
阪急がやり遂げた総合文化開発
阪急電鉄の創業者・小林一三は、破産寸前のローカル線立て直しの為、路線周辺の文化開発に携わる事にしました。
まだ賃貸アパートが一般的だった時代に、路線周辺に通勤用の分譲一戸建て住宅を売り出し、
不動産事業を展開。
終着駅は劇場や百貨店を作り、電車に乗る目的を、通勤、通学、エンターテイメントの三本柱にしたのです。
さらに地主の許可が下りた所から駅を高架にしエレベーターを設置。
テナント誘致と、利便性を追及する事で、阪急沿線に住み、阪急に乗れば通勤と娯楽が両立する便利さが待っているという文化開発を成し遂げたのです。
戦後の国鉄のローカル線の一部は、政治家の権力維持目的で作られた為、赤字となり廃線に追い込まれています。
これは線路の向こうに文化開発がない典型的な例です。
日本橋高島屋コンシェルジュにみる文化価値
文化開発の理想形は商品やサービスがお客様のご要望に100%フィットする事です。
それを実行してるのが、日本橋高島屋トップコンシェルジュの敷田さんです。
ある日、敷田さんは北斎の浮世絵を購入したいというフランス人のお客様に遭遇しました。
その時敷田さんは、自らのつてを辿り、日本人でも知らない様な銀座の木版画の店にお客様をタクシーで連れて行き、購入、免税手続きを代行したのだそうです。
念願の浮世絵が手に入った事以上に、敷田さんの心遣いに感動したフランス人のお客様は、半年後来日し、日本橋高島屋でお買い物をされたという事です。
敷田さんは、店内にない商品やサービスに関してお客様から聞かれても快く応対し、お客様のご要望にNOと言わない努力を怠らないと言います。
この様に、個人で日本のサービス、商品を使えばどの様な素晴らしい事があるか、消費者、購入者に説明する事は可能なのです。
ミシュランガイドが発売された理由
私たちの生活の中には、文化開発の方が有名になった例もあります。
典型的な例が、タイヤのミシュランが毎年リリースしている世界的グルメガイド『ミシュランガイドブック』です。
何故ミシュランはグルメガイドをリリースしようとしたのでしょうか。
そこに隠された意図は文化価値の原点と言えるので、紐解いてみることにします。
タイヤの販路を広げる為にミシュランがやった事
ミシュランガイドの発行は1900年。
当時の自動車産業は、量産化が始まる前で、各自動車メーカーは、小さい町工場で車を作っていました。
いずれ自動車は量産されるだろう将来の市場を予測したタイヤメーカーのミシュランは、タイヤは消耗品になると考え、自社製品の量産に乗り出したのです。
ですが、タイヤを作り続けるだけでは自動車メーカーはタイヤを買ってくれません。
そこでミシュランは自社製品を使って貰う為、自動車旅行を自動車ユーザーに、広めようと考えました。
自動車旅行を広めるだけでは、他の自動車部品メーカーに売り上げを追い抜かれると判断したミシュランは、本社のあるフランス各地の美味しいレストランのグルメガイドを出す事で、自動車でレストランを周って貰い、タイヤを売ろうとしたのです。
今では本業であるタイヤメーカーというより、文化開発の一端として行ったグルメガイドの方が有名になったミシュランですが、世界に通じる文化開発のお手本となっている事は確かです。
ベンツカフェは、第二のミシュランになるか
バブル崩壊後、20~40代の車離れが深刻化し、日本の輸入車市場は右肩下がりとなりました。
そんな中、文化開発で成功しリース、レンタカーを通じ購入に着々と売り上げを伸ばしているのがメルセデス・ベンツです。
ベンツは、’11年7月に港区六本木に今までのディーラーと全く違うコンセプトのアンテナショップ「メルセデス・ベンツ・コネクション」を期間限定でオープンしました。
アンテナショップのコンセプトは、「カフェやレストランの中にカーディーラーがある」という逆転の発想です。
アンテナショップのターゲットは長時間カフェに居て、お喋りしている人たちです。
1階にカフェ「ダウンステアーズコーヒー」を設け、インテリアにこだわりつつ、メニュー構成は大手フランチャイズカフェより低めに設定しリピーターを増やす様にしています。
会費無料の「メルセデス・コネクテット」に入会すれば館内のwifiは無料で使用可能。
入会後は会員限定のイベントに参加出来る他、免許証を持っていれば、館内の展示車両を試乗コースで運転させて貰えるというサービスもあります。
これが車に興味がなく免許は身分証明書代わりに持っている人たちにベンツの魅力、ベンツが提供する豊かな暮らしを知って貰う秘訣なのです。
ベンツに憧れた昭和の世代は、ベンツさえ手に入れば豊かな暮らしが待っているという夢を描いていました。
アンテナショップが成功したのは、ベンツが提供するお洒落な暮らしを、今まで車に興味の無かった人に対しても、具体的かつ視覚化した事が、ベンツの文化開発に繋がったからだと思います。
商品価値は社会が決める
ここまでは、企業が消費者に、新しいサービスを利用したり、新商品を購入し使えば生活が豊かになる為に努力し成功した例を挙げてみました。
今からは、企業が消費者のニーズを汲み取った後で、商品やサービスに文化価値を付加して売り上げに貢献した例を紹介したいと思います。
ハーレーが日本で売れた理由
‘80年代をピークに右肩下がりの日本の大型オートバイ市場で好調なのがハーレーです。
ハーレーと言うと映画「イージーライダー」を彷彿させるアウトローのイメージがあります。
そのイメージを覆す為、ハーレー日本法人が、ハーレーをはじめとした大型バイクが、日本の幅広い世代に再び普及する為に行った努力は、文化開発と言っても過言ではありません。
日本で発売されているハーレーは米国本社と交渉の末、騒音基準に適した純正マフラーを装着しています。
販売代理店に対しても、改造バイクの整備はしないように通達するという徹底ぶりです。
大型二輪の免許所得が教習所で出来る様になったのも、ハーレー日本法人の働きかけでした。
大型バイクに乗る楽しみを、日本人に知って貰いたいという意気込みこそ文化開発なのです。
他のバイクショップとビジュアル面で一線を画すのもハーレーの特徴です。
独特の美しいデザインを来店者に伝える為に展示車両の間を広く取り、ベビーカーで来店しても車両を見れる様になりました。
応対するメカニックも油まみれの作業着ではない所も特筆すべき所です。
ハーレーに乗るユーザーだけが楽しむのではなく、ご家族の方にもハーレーの提供する
豊かな生活を理解して貰うべくハーレー日本法人は「ハーレーオーナーズクラブ」を展開。
ユーザー同士のコミュニティを大事にし、ツーリングをはじめとしたイベントを通じ、
サポート体制を整えている事も文化開発と言えると思います。
イケアカフェで食事をした人が何を買うか
家具販売最大手のイケアの売り上げの3分の1が店内のレストランだという事をご存知でしょうか。
家具や食器を売ると同時に、イケア発祥地スウェーデンの文化やエジカルな生活をお客様に知って貰う為に生まれたのがイケアレストランやカフェです。
開店30分前のコーヒーやカプチーノが無料で、ドリンクバー120円、ソフトクリーム50円、
カレーは300円未満とファミレスも驚きの価格設定にリピーター続出のカフェとレストラン。
本業の家具販売は儲からないのでは、と心配する人もいるかもしれません。
ですが、イケアのフードディレクターは’15年にロンドン、パリ、オスロに、家具を販売しないレシトランオンリーの店「ダイニング・クラブ」をオープンしたというのです。
文化開発が本業を差し置いてとはどの様な目的があるのでしょうか。
イケアのフードディレクターによりますと、
「イケアの食事は最高だ。それに家具も販売している。この家具やお皿はいいね、と言ってもらうのが狙い」なのだそうです。
どこかで聞いた事はないでしょうか。
そう、「スターバックスの椅子」です。
スターバックスのリピーターの中には、「コーヒーというより、あの椅子や雰囲気が好き」という人が居ます。
自分たちが作り上げた文化開発を逆に利用して、本業である家具や雑貨を売るというイケアのしたたかなアイデアには脱帽します。
まとめ
どんな商品も初めて世の中に登場した時は、消費者にとって未知のものです。
それを使う目的や良さも伝わってきません。
日本で文化開発が遅れた理由の1つは、商品の宣伝を口コミに頼った事にあります。
一部の熱狂的な人に支持される商品は、マニアな人々がコンビニ商品の買い支えをするのと同じで、価値観人生観が違う人間をワクワクさせ、豊かにしてくれるものにはならないのです。
今回紹介したサービスや商品の成功例を通し、様々な価値観、人生観を持つ人々を豊かにする
サービスの提供や商品の開発に勤しみましょう。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
Twitter で仕事を旅するキャリアジャーニーを
フォローしよう!