国家公務員とは?実態ややりがい、国家公務員になる方法を解説

国家公務員とは?実態ややりがい、国家公務員になる方法を解説

国家公務員と聞いてどういうイメージを抱きますか?ネガティブなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。実際には、国家公務員は国のプラスとなるような、大きな仕事をしています。

ここでは、国家公務員の仕事、なる方法、試験制度や官庁訪問、キャリアなどについて解説します。国家公務員に興味のある方は目を通してみてください。

国家公務員とは?

国家公務員とは、憲法により「全体の奉仕者」と規定されており、国のために官庁をはじめ国の機関等で、国のために働く職員を指します。国家公務員の中でも、大きく特別職と一般職に分けられます。一般職とは、通常想定されるような各省庁で勤務する行政官や外交官などがあります。

特別職の職員は一般職以外の職員で、以下のようなものは特別職です。

  • 内閣総理大臣
  • 国務大臣
  • 会計検査院長
  • 人事院総裁
  • 内閣法制局長官…

省いたものは何十個もあります。一口に公務員といってもさまざまなものがあります。お役所や省庁に勤務するのだけが国家公務員ではないのです。

国家公務員総合職とは?

いわゆる官僚と呼ばれる人です。国家公務員の中でも「キャリア」と呼ばれる、エリートにあたります。政策の企画立案、法律の条文作成、国務大臣の答弁の原稿を書くなど、中央官庁で国の政策決定に関わる中枢、重要な部分を担います。

国の未来を見据え、日本をよりよくするための判断が求められる職種です。幅広くスキルを磨き、第一線で活躍する中でキャリアを磨きます。

国家公務員総合職になる試験の受験資格とは?

■ 院卒者試験 30歳未満で大学院修了および大学院修了見込みの方 ※法務区分は、司法試験合格者等を対象

■ 大卒程度試験 21歳以上30歳未満の方 ※大学卒業および卒業見込みの方は21歳未満で受験可 ※教養区分については、20歳も受験可

■ 試験種目

○院卒者試験 ・第一次試験:基礎能力試験(多肢選択式)、専門試験(多肢選択式) ・第二次試験:専門試験(記述式)、政策課題討議試験、人物試験 ・英語試験

○大卒程度試験
・第一次試験:基礎能力試験(多肢選択式)、専門試験(多肢選択式)
・第二次試験:専門試験(記述式)、政策論文試験、人物試験
・英語試験
※選択する試験区分によって、試験種目が多少異なります。

国家公務員一般職とは?

国家一般職は、官僚の補佐の階級です。主に、法律や政令などの執行に関わる手続きや運用などの事務処理等の業務をおこなう係員という扱いとなります。

官僚を支える縁の下の力持ちです。いわゆる「ノンキャリア」組という見方もされます。確かに昇進のスピードや任される仕事の責任などは官僚に劣りますが、一般職からでも「キャリア」扱いされる職員も出ているようです。

専門職として、あるいはゼネラリスト的な活躍の道もあります。

国家公務員一般職の採用試験受験資格とは?

■ 大卒程度試験

21歳以上30歳未満の方

※大学・短大又は高専の卒業および卒業見込みの方は21歳未満受験可

■ 高卒者試験

高校卒業見込み、または卒業後2年以内の方

※中学卒業後2年以上5年未満の方も受験可

■ 社会人試験

(係員級)

40歳未満の方

※高卒者試験の受験資格を有する方を除く

■ 試験種目

○大卒程度試験

・第一次試験:基礎能力試験( 多肢選択式)、専門試験( 多肢選択式)、一般論文試験

・第二次試験:人物試験

○高卒者試験・社会人試験

(係員級)

・第一次試験:基礎能力試験( 多肢選択式)、適性試験( 多肢選択式)、専門試験(多肢選択式)、作文試験

・第二次試験:人物試験

※選択する試験区分によって、試験種目が多少異なります。

国家公務員専門職とは?

その名の通り、特定の行政分野に関わる専門知識を有するかどうかを重視しておこなう係員の採用試験です。皇宮護衛官、入国警備官、刑務官などのスペシャリストです。

国家公務員専門職の受験資格とは?

各採用試験によって異なります。

■ 試験の種類

○大卒程度試験

皇宮護衛官採用試験/法務省専門職員(人間科学)採用試験[矯正心理専門職・法務教官・保護観察官]/外務省専門職員採用試験/財務専門官採用試験/国税専門官採用試験/食品衛生監視員採用試験/労働基準監督官採用試験/航空管制官採用試験/防衛省専門職員採用試験

○高卒程度試験

皇宮護衛官採用試験/刑務官採用試験/入国警備官採用試験/税務職員採用試験/航空保安大学校学生採用試験/海上保安大学校学生採用試験/海上保安学校学生採用試験/気象大学校学生採用試験

国家公務員経験者採用とは?

民間企業等で実務経験のある人からも採用枠があります。

政策の企画立案など、高度な知識・技術または経験を必要とする業務に携わる係長級の試験など、多種多様な募集がされています。

国家公務員経験者採用の受験資格とは?

■ 係長級(事務)

大学等を卒業した日又は大学院の課程等を修了した日のうち最も古い日から起算して2年を経過した方

※第一次試験がおこなわれる年度の4月1日における経過年数

※経験者採用試験(係長級(事務))は、採用予定のあるいくつかの府省が合同で実施。

■ その他

大学卒業後5年以上、または高校卒業後9年以上の年数が経過している方

※対象となる官職を踏まえ、必要に応じて年数の上乗せ又は短縮を行うことや、特定の資格を有すること等を要件とすることもある。

■ 試験種目

係長級(事務)

・第一次試験:基礎能力試験(多肢選択式)、経験論文試験

・第二次試験:人物試験、政策課題討議試験

■ その他

・第一次試験:基礎能力試験(多肢選択式)のほか、対象となる官職 を踏まえ、試験ごとに設定

・第二次試験:人物試験のほか、対象となる官職を踏まえ、試験ごとに設定

(試験の種類に応じて、以下の試験種目の中から定められます。)

基礎能力試験/人物試験/政策課題討議試験/政策論文試験/総合事例研究試験/一般論文試験/専門試験/外国語試験/経験論文試験/総合評価面接試験

国家公務員法とは?

国家公務員が働く上では、国家公務員として働く上で定められた決まりを遵守することが求められます。

たとえば、国家公務員法第96条では「服務の根本基準」が定められ、 「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、 職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とされています。

ほかにも、以下のようなものがあります。

  • 法令及び上司の命令に従う義務(国家公務員法第98条)
  • 争議行為等の禁止(国家公務員法第98条第2項)
  • 信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条)
  • 秘密を守る義務(国家公務員法第100条)
  • 職務に専念する義務(国家公務員法第101条)
  • 政治的行為の制限(国家公務員法第102条)
  • 私企業からの隔離(国家公務員法第103条)
  • 他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法第104条)

国家公務員は全体の奉仕者、という観点から、以上の法律について制約が存在することがあります。例を挙げると、副業は禁止です。本を書いて印税を得ること、ブログで広告収入を得ることなど、個人事業主として収入を得る行為が禁止されます。

地方公務員の場合、上司に許可されれば許される場合もありますが、国家の場合は不可とされています。違反した場合、法律での規定に従い減給などの処分がなされ、昇進などキャリアに悪影響をもたらします。

国家公務員になるには?

国家公務員になるためには、採用試験を受けなくてはなりません。当然ですが採用試験の内容や回数、実施方法などは職種ごとに異なります。ただし、稀に選考のみで試験がない場合もあります。

国家公務員総合職になる方法

ここでは、多くの方が志望する国家総合職(官僚)の採用試験について書きます。

国家総合職では、1次試験→2次試験を経て、2次試験までパスをすると、晴れて官庁訪問の権利を得られます。

官庁訪問により希望の官庁3つまでを選び訪問し、そこで内定が出た官庁に入省することになる、というのが標準的な流れです。試験に合格しても、官庁訪問をクリアし内定を取れるのは3割程度とされます。

詳しく見ていきます。

国家総合職には春試験と秋試験の2回チャンスがある

国家総合職の試験は、秋試験と春試験と呼ばれるものがあります。秋試験は、入省する2年前の秋に行われ、春試験は入省する1年前の春に実施されます。

たとえば2020年の4月に入省したければ、2018年の秋に実施される試験か、2019年の試験を受けることができます。

後述する官庁訪問は1年前の6月に実施されますので、秋試験に合格すれば、翌年の官庁訪問まで時間があり「面接」の対策をすれば済むということになります。

春試験合格者の方が選べる省庁は多いとされますが、秋試験を受けると、春の時期に滑り止めとして民間就活を行うことができ、民間企業からの内定を取っておくことができます。

大学院卒後程度と大学卒業程度で試験の内容や難易度も変わりますが、これを活用する方も一定数います。万が一秋試験に落ちても、翌年の春試験にチャレンジすることが可能で、チャンスが2回あるのです。

もちろん、新卒で官僚になりたいなら、大学3年生の秋ないしは大学院1年生の秋に試験を受けるのですから、早めに準備をすることが求められます。

国家公務員総合職の秋試験の内容とは?

秋試験には1次、2次試験があり、試験の概要は以下のようになっています。

第1次試験

基礎能力試験(多肢選択式)

試験時間

2時間

1時間30分

出題区分

Ⅰ部:知能分野

Ⅱ部:知識分野

科目

文章理解

判断・数的推理

※資料解釈含む

自然

人文

社会

※時事含む

出題数

8

16

10

10

10

総合論文試験

試験時間

4時間

出題区分

科目

政策の企画立案の基礎となる

教養・哲学的な考え方に関するもの

具体的な政策課題に関するもの

出題数

1

1

第2次試験

政策課題討議試験

試験時間

2時間程度

内容

  • レジュメ作成
  • 個別発表
  • グループ討議

※ 討議を踏まえて個別発表

企画提案試験

試験時間

2時間

1時間程度

出題区分

Ⅰ部

Ⅱ部

内容

小論文

※課題と資料を与え、解決策を提案させる

プレゼンテーション及び質疑応答

※小論文の内容について試験官に説明、その後質疑応答を受ける

人物試験

内容

人柄、対人的能力などについての個別面接

(参考として性格検査を実施)

(人事院HPより)

1次試験は、筆記試験です。マークシート方式のテストと、政策論文の記述試験があります。それをクリアすると、人物試験である2次試験があります。国家公務員も人物重視と言われ、この2次試験の配点を重視する傾向が出てきました。2次試験では、政策課題討議試験と企画提案試験、人物試験があります。

政策課題討議試験は、課題についてレジュメを作り、各自のレジュメをもとにグループディスカッション、レジュメを元に面接官の前でプレゼンテーションを行うという内容となっています。

企画提案試験は、小論文、課題について試験官の前でプレゼンテーション及び質疑応答、人物試験は個別面談を実施されます。

さまざまな方法で、官僚としての資質を問う試験です。

国家公務員総合職の春試験の内容とは?

春試験は、区分がいくつもありますが、多くの官僚の場合、法律区分、経済区分、政治・国際区分のいずれかを選ぶことが多いです。

教養試験である選択式の1次試験と、政策課題論文、面接・グループ討議などのある2次試験があり、それにパスすると官庁訪問です。

(人事院HPより)

この官庁訪問をクリアし、内定を取れるのは、公務員試験の2次試験に合格した中でも3割のみとなっています。

つまり、試験には合格しても官庁訪問で落とされ、7割が来年のチャレンジか、あきらめて民間就職を迫られることになります。(試験の合格は総合職試験、一般職試験(大卒程度試験)は、最終合格発表日から3年間です。一般職(高卒者試験、社会人試験(係員級))は、最終合格発表日から1年間有効なため、次年度は官庁訪問のみ)                              

国家公務員の仕事内容を知る方法とは?

国家公務員といえど、職種により、また省庁により、また省庁の中でも業務内容は千差万別です。

官僚の場合の例を挙げておくと、、法律の条文や政策立案などの1文や一言一句に至るまで、関係する利害団体とも調整しながら作り上げていく作業が続きます。3行作るのに何時間も、下手をすると何日もかかります。

ですが、自分が国の仕組みを、決まりを作り上げているという達成感を胸に仕事に励む官僚は大勢います。

細かい省庁ごとの部門、業務内容などを詳しく知りたい場合は、その省庁の説明会に行ったり資料を読むことも重要ですが、白書を読んでみることもおすすめします。

なお、官庁からは業務パンフレットが出ていますし、ニュースで注目される政策について理解を深めることで、業務内容をつかんでいくという方法もあります。

国家公務員は女性も活躍している?

女性の国家公務員の活躍の場は拡大しています。公務員の仕事の魅力課題について女性の立場からの講演のあるイベントが人事院主催で行われたりと、官庁としても女性の活躍する職場作りを目指す姿勢が伺えます。

子育てをしながらでも、仕事面でも活躍し続けることができる職場作りが行われてもいます。平成29年4月1日現在、国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合は33.4%です。

男性の育児休業取得率については14.5%となっており、取得する動きも見えつつあるのが現状です。制度を活用し、公務に集中することができる体制が整えられています。

国家公務員の採用情報をチェックする方法とは?

人事院のホームページから、国家公務員の採用予定数や採用状況についての情報を見ることができます。その他採用に関する情報が記載されています。

国家公務員で重要な官庁訪問とは?

官庁訪問とは、受験者が志望官庁を訪問し、業務説明や面接を受けたりするもので、志望府省等に採用されるための重要なステップとなっています。

各省庁にはカラーがあり、その職場に応じた適正な人材を採用したいと考えています。総合職の官庁訪問の場合、面接するのは現役の官僚です。

志望理由のほかにも、政策や社会問題への考え方について担当者と議論を重ねたりする中で、受験者の考え方、考える力、官僚としての資質もチェックされていると言えます。

受験者からすれば、積極的なPRの場です。省庁の業務に関わりの深い内容について知識を深め、自分の意見を述べられるように準備しておくことが要求されます。

この官庁訪問ですが、1つの省庁につき1日がかりの長期戦です。何人もの人と面接を重ねます。1度目の官庁訪問の後、また来て欲しい場合は個別に日時を伝えられます。

こうして何度も足を運ぶ中で、最終的に合格すると内々定を得ることができます。

これが7月中旬から下旬です。

国家公務員の勤務条件とは?

国家公務員の総合職の勤務条件は、以下の通りとなっています。現実には、特に総合職の場合に残業も見られるのも事実です。ほかの職種の給与は少し下がりますが、待遇や勤務時間等はそれほど大きな差はないでしょう。

  • 給与 総合職(院卒)試験合格者 初任給例:261,280円 (行(一)2級)
  • 総合職(大卒程度)試験合格者 初任給例:229,240円(行(一)2級)
  • 試用期間 6か月(条件付任用期間)
  • 諸手当 本府省業務調整手当、地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、超過勤務手当等

参考 初任給(行(一)2級)の場合

  • 本府省業務調整手当(本府省に勤務する場合):8800円
  • 地域手当(東京都特別区内に勤務する場合):俸給等の100分の20
  • 扶養手当:扶養親族のある者に、配偶者6,500円、子10,000円等
  • 住居手当:借家(賃貸のアパート等)に住んでいる者等に、最高27,000円
  • 通勤手当:交通機関を利用している者等に、定期券相当額(1箇月当たり最高55,000円)等
  • 昇給 年1回(1月1日)
  • 賞与 年2回(6月30日・12月10日)

※期末手当・勤勉手当(いわゆる賞与):1年間に俸給等の約4.4月分

勤務時間 1日7時間45分(フレックスタイム制度あり)

■ 休日休暇

週休2日制、祝日、年次休暇、育児休業、病気休暇、特別休暇(夏季・結婚・出産・忌引・ボランティア等)、介護休暇、育児休業制度 等

■ 研修 内閣人事局や人事院が主催する各種研修の他、採用省庁における個別の研修など様々な研修あり

福利厚生が充実しているのも公務員の強みと言えそうですが、それらを加味したとしても、民間の大手企業の水準に比べると収入の面では劣ります。

ですが、国をよくしたいというやりがいがあれば、そんなことも気にしていないのかもしれませんね。

国家公務員共済連合組合とは?

国家公務員共済組合連合会とは、国家公務員が加入する共済組合の連合組織です。法第22条の規定により法人格が与えられており、年金管理・運営事務のほか、福利厚生等を提供します。

直営病院や宿泊施設もあり、組合員本人やその家族及び年金受給者に対して、宿泊(利用)料金の割引が行われます。このあたりは国家公務員の特権と言えそうです。

国家公務員の給料・年収とは?

平均年収は、330,531円(平均年齢43.6歳)です。各種手当ては別につくので、もう少し額は増えます。

しかし、国家公務員の労働環境、能力に応じて高い給与をもらっているかというと、現状はそうではありません。

国家公務員の官僚クラスの給与であっても、中小企業には勝りますが民間企業の大手に比べると下回ります。東大卒の官僚が減り、外資や他の一流企業に人材が流れていると言われるのは、官僚になれる優秀な人材が、待遇の良さを求めて民間企業に流れている現状に理由があります。

公務員は残業もなく定時で帰れるのに安定で高額な給与をもらえるという批判も存在していますが、現実には残業が激しい部署もあり、官僚の学歴、行っている業務から考えると、待遇は釣り合わないという声が聞こえてもおかしくありません。

国家公務員のボーナスはある?

国家公務員にもボーナスがあります。ボーナスがもらえる時期も法律で規定され、国家公務員は夏の時期は6月30日、冬の時期は12月10日とされます。一般企業とも一致しています。

公務員のボーナスの平均額は約60万円強とされますが、国家公務員の管理職にもなると、より高額で80万以上にもなる人も一定数います。民間企業のボーナスに比べれば多いです。しかし前述の通り、基本給を考えるとトータルではずば抜けてよいということはできないでしょう。

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